20190113 奄美 ルアー釣行 後半
遠征はドラマを呼ぶ
今回は2泊3日の短時間釣行。前半2日の渋さに、この厳寒期に奄美を訪れた自分を恨む。
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泣いても笑ってもこの日の夜には、愛知に戻っているのだ。5回の奄美遠征の経験と、ほんのちょっとの運に賭ける。
まずは、朝マズメ。南部最大の港にてヒラアジやハージン(スジアラ)を狙う。
日本標準時を採用しているとはいえ、本土からはさらに西にあるこの島では、日の出も遅い。ややひんやりとした朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、ルアーをキャストする。
60gのジグを遠投すれば、ボトムまで30秒もかかるようなこの場所。GTの回遊もあるような、手軽ながら超一級ポイントだ。
薄暗いうち、ラピードF130で表層を探る。しばらくは無反応だったが、近くでボイル発生。そのまま誘い出していると、出たが、ルアーに触った感触はありこそすれ、フックに掛かるには至らなかった。
オニヒラアジのような出方ではあったが、堤防際で起きた同じようなボイルの主を確かめるとスマガツオだった。
南房のソウダガツオしかり、小さなベイトを偏食する傾向にあるスマは、明るくなってルアーのシルエットがはっきり出るようになるとルアーには見向きもしなくなる。
雰囲気はあるものの、魚からの反応が得られない。あらゆるレンジとルアーを試すも、ついに魚を釣り上げることはできなかった。
昼過ぎには空港近くにいなければならないとなると、午前中一杯が、南部で釣りをすることのできる残された時間になる。
ヒラアジを釣ることを半ば諦めていた僕は、ハタ類に相手をしてもらうことを提案。その中でも、ヒラアジの回遊の望める場所を目指すことにした。
ワンドから岬の先端まで、くまなく探っていく。狙い方は、おなじみのライトワインド。尺ヘッドD5gに、パラワームダートをセットし、ボトム付近を丁寧に通してやる。
藻の生い茂る海岸線に、膝付近まで立ち込む。潮位が低い間はこうしないとブレイクの先まで届かない。ウェットを履いていれば、水温は気にならないほどだ。前回まで使用していたメバルロッドは、5gにもなると投げづらく、飛距離が望めなかったが、今回使用しているマイクロゲーマーは、3gのジグヘッドから、10gのメタルジグ、そしてプラグまで快適に投げることができる。必然的に、狙える範囲が大きくなり、立ち込んでする釣りでは有利に働く。
いつものように、着底から3回程度しゃくり、テンションフォールを入れると、ボトム付近で小さなアタリ。ハタだと思ったので、根から剥がすためにロッドを一気に立て、勢い込んでリールを巻きにかかる。しかし、次の瞬間、ハタではない”なにか”は、勢いよく「走り出し」、あっという間に根ずれを起こしラインブレイク。
「今回も来たか」と、心臓は荒々しく脈を打つ。奄美遠征で、一度は訪れる、絶対に獲れない大物の襲来である。逃げられた絶望感に打ちひしがれつつ、しかし一方で、まだチャンスはあるのでは、と淡い期待を抱く。
そのまま、岬方向へ歩みを進めるものの、ヤミハタとエソからのアタリ以外は、一度メッキのような引きをする小魚に逃げられたのみ。
期待とは裏腹、大物からの反応はなかった。
タイムリミットも迫るので、逆方向に戻りながら打っていく。そういえば...とふと思い出したのが、もう5年ほど前になるだろうか、冬か初春の寒い時期に同じ場所でロウニンアジを釣った時のことである。確かあの時は、と、手にしたのはスプーン。
ワンドの最奥部、ブレイクの先に向かいそれを遠投する。着底と同時に、1回、2回としゃくり上げ、そのままテンションフォール。3回ほど繰り返したとき、まるでアジングかのようなフォール中のコツっというアタリ。反射的に合わせを入れると、先ほど逃がした魚のように、リールから糸を奪い去っていく。幸か不幸か、先ほどの大物には及ばないサイズらしい。根をかわし、ブレイクの内側まで寄せた。先ほどのラインブレイクの焦りから、やり取りが雑になっていた。「銀色の扁平な魚」は、すさまじい瞬発力で、ドラグに仕事をさせずラインを断ち切った。またしても糸を切られてしまった。
しかし、確信したことが2つ。1)先ほどから逃がしているのはロウニンアジ 2)ボトム付近で群れている こと。まさに、5年前の再現なのだ。そうと分かれば、やることは同じだ。ラインシステムを入念に組みなおし、キャスト。
またしてもついばむような小さなアタリ。次の瞬間訪れる強烈な引き。ハタではないので、初動で相手に主導権を握られようが構わない、とドラグは緩めにしてある。根ずれするかどうかは、向こうの気分次第だ。
ロッドのパワーとしなやかさを存分に生かしつつ、不意の引きには腕で柔軟に対応する。寄せる重みから、なかなかのサイズだと確信する。
ついに、岸まで数m。まだ走る意欲を見せる相手の頭を、ロッドさばきで岸に向ける。
一目見て大きいと思えるロウニンアジだった。今回は記憶にも記録にも残すため、積極的にメジャーでサイズを測った。50㎝に届こうかという、良型のロウニンガーラだった。張り出した頭部と、ややくすんだ体色が筆舌に尽くしがたい格好良さを醸し出す。
思わず、やったあ、と絶叫。魚のサイズはもちろんだが、シーバスタックルでも苦労するであろうこのサイズをライトゲームタックルで穫れたことが嬉しい。
素早くハリを外し、蘇生しリリースする。ゆったりと深みに帰っていく魚影が美しい。
間違いなく群れはまだいるはずだ。根や体に擦れ傷んだリーダーを直し、再度同じ釣り方で狙う。答えはすぐに帰ってくる。
荒々しい引きをいなすことも慣れ、ファイトに余裕すら出てきた。
先ほどより重いその魚体は、より体高があり、小GTの風格すら漂わせるいぶし銀。メジャーは50㎝を指す。
完全に群れを捉えた。さらにもう1匹同サイズを追加する。このサイズが連発すれば、全身からアドレナリンが噴き出す。
父親は、苦戦している。シーバスタックルでもネズレでラインを切られたようだ。
そうこうしているうちに、ぱったりとアタリは遠のいた。恐らくプレッシャーを感じた群れは別の場所へ向かったのだろう。
これだから奄美は、やめられないのだ。
離島遠征の醍醐味をい体現するような魚に出会うことができたのは、渋かった前半を考えても、手放しで喜べる。
5回にわたる遠征の経験値と、運が引き寄せた群れだった。
有終の美、これにて奄美遠征終了、と思いきや、サーフで延長戦だ。
いつもならダツやカンモンハタが遊んでくれる空港近くのサーフも、この日に限って沈黙。
素晴らしいロケーションでルアーを投げられることに幸福を感じつつ、父親を空港へ送る。
残された時間は1時間ほど。延長の延長は、リーフエッジと相場が決まっている。
慌ててウェットに着替え、ラテオを担ぎ、初日のリベンジにいざ参らん。
またしてもダツの反応はあるものの、他の魚は姿を見せてはくれない。クレバス状に落ち込むスリットに足がすくんだり、そこを泳ぐ巨大なブダイに驚いたりしつつ、釣りは終わりの時間を迎える。
最後の一投、無事に釣行を終われる感謝を込め、ヘビーショット105sをフルキャスト。表層を早巻きしていると、ダツが見送りに来てくれる。そのまま、足元のスリットを引いた途端、ギュポン、という音を立て、「黄緑の魚」がヒット。そのままの勢いでリーフに潜ろうとするカスミアジを、負けじとロッドを立て「えいや」と足場にずり上げる。
体力を持て余すカスミアジは、暴れ続け、針を外すことに成功した。先ほどのロウニンアジよりは小さかったが、キャッチしたかった一尾だった。
最後の1投に出る映画のような展開に苦笑しつつ、そそくさとリーフ、そして奄美を後にしたのだった。